季節のスケッチ

#112
2023.12.30

このたび私、鈴木祥子のやっておりますレーベル、
BEARFOREST RECORDSの(来年→)15周年を記念して、
発足した年である2009年からの主な作品をまとめた集大成、ともいえる
アルバムを作ることになりました。
来春、3月の発売を目標にわたくしハリキッテおります。
マスタリングも新しくなり、写真やセルフライナーや解説も充実、もちろん内容は大変素晴らしく(自画自賛。。。)
ぜひお聴きいただけたら幸甚の極みなのでございます!

ベアフォレスト・レコーズは、小さいけれど
"ほんとうの" 音楽を作るためのコミュニティです。
ほんとうの音楽ってなにか、と訊かれたら
「思わず身体が動いてワクワクして、
私は私でいまやることをやっていこう、という想い——別の言葉で
生きるチカラ、とも言います——で心を満たしてくれる音楽!」。。。
と答えるでしょう。

何よりもBEARFOREST RECORDSは恐れ多くもNIAGARA RECORDSの深い示唆と巨きな影響を受けて成り立ったレーベルである、ということを告白せねばなりません。
過去の録音はいま聴きかえしてもエネルギッシュで、1曲目から順を追ってゆくと録音状態や録音そのものへの意識、アレンジ面では細部への神経の配り方などに格段の進歩が見られ、磁気テープが生産されなくなり、 "アナログ録音" が確実に忘れられてゆく時代にひたすら "テープの音" や "アナログ卓" にこだわった愚かしくも純粋な熱情は、NIAGARAへの尽きせぬ想いと憧れ無しには決して生まれて来ないものでした。

『青空のように』をカヴァーするとき、厚かましくも大瀧詠一さんに長い質問のメールをお送りし、私のような若輩。。。後輩に御自身の音楽の真髄を惜しみなく教えてくださった、その巨きな優しさに今も襟を正したい想い、泣きそうな想いの両方があります。

人生においてこのような優れた師と出逢えることはただ一度の暁幸であり、自分の音楽家としての幸福、を想わずにはいられません。

本当に生意気極まる発言なのですが、大瀧さんと自分のあいだに、ひとつだけ共通——と言っていいのか、共感、といっていいような音楽上の意識があったとするならば、それは音楽というものは先人から与えられたものの集積であり、 "自分" から生まれるものではなく歴史性のなかで捉えられねばならないものである、という強い認識でした。

音楽は自分の中、には無い。音楽の在る場所、と繋がることが出来るだけだと私はずっと感じていました。
大瀧さんの音楽を、言葉や存在を通してそれが揺るがない確信に変わった、と言ったほうがずっと正確かも知れません。

もしもすこしでも、そのような部分を評価してくださったのだとしたら、自分がやるべきことが自ずと視えてくる気がします。
これからの人生を通して倦むことなく実践し体験してゆきたい、と今、心から思うのです。

初期のBEARFOREST RECORDSは現なりすレコード主宰者である平澤直孝さんの行動力と突破力、そして音への鋭い感覚と感性のおかげでその活動を維持することが出来、基礎をつくることが出来た、と言っても過言ではありません。
平澤さん、本当に、本当にありがとうございます。また御一緒出来るようになってよかった!!。。。

2020年にはビクタースタジオの素晴らしいエンジニア・中山佳敬さんとの出逢いがありました。プロデュース・チームとしての更なる成長を目指しながら、これからどんな音を作りお届けしてゆけるのか、どんなふうに歩みを進めてゆけるのか。。。

"BEARFORESTの15年" を通して解ったこと、確信をもって言えること。
それは「人生は何度でも始められる」ということです。
いつからでも、いくつになっても、最初から、あたらしい気持ちで。

そう、このアルバムの次はオリジナル・アルバムです。
来年からはじまる第3章——Chapter3に、
どうか御期待いただけたら大変、大変幸せです!!

2023年12月30日、
大瀧詠一さんの10回めの御命日に。

鈴木祥子。

image loading...
昨日は満月。鏡のようなしずかな海に、金色の月の道が走っていました。


Archives